士業事務所の「顧問先からの同じ質問」に毎回答える負担を減らす

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ノウハウ

年末調整の時期になると、顧問先から同じような電話やメールが続けて届く。「この書類はいつまでに出せばいいですか」「去年と同じものを用意すれば大丈夫ですか」。先週ほかの顧問先に説明したばかりの内容を、また最初から説明する。そのたびに手元の申告書や届出の作業が止まり、気づけば本来の業務は夜に回っている。税理士・社労士・行政書士などの士業事務所では、こうした「同じ質問への回答」が、目に見えにくい大きな負担になっています。

この記事では、顧問先からの同じ質問に毎回答える負担を減らすための考え方と手順を解説します。ポイントは、質問に上手に答えることではなく、答えを顧問先の手元に先に届けておくことです。

同じ質問が繰り返し届く理由

同じ質問が何度も来るのは、顧問先の理解が足りないからではありません。多くの場合、事務所側の答え方に原因があります。

  • 答えが顧問先の手元に残っていない: 電話で口頭説明していると、顧問先は次の年には忘れている。メールで答えていても、そのメールを探し出すより電話したほうが早い
  • 質問の時期がほぼ決まっている: 年末調整、確定申告、労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届など、毎年同じ時期に同じ質問が集中する。それなのに、来てから答えている
  • 事務所内で答え方がそろっていない: 担当者ごとに説明の仕方が違うため、顧問先は念のため別の人にも確認する。所内でも「あの件はどう答えたか」の確認が発生する

つまり、答えそのものは事務所の中にすでにあるのに、顧問先が自分で見られる形になっていないことが、繰り返しの正体です。

手順1: 1か月分の質問を書き出して「よくある質問」を見つける

最初にやるのは、質問を記録することです。いきなりよくある質問集(FAQ)を作り始めると、事務所が「聞かれていそう」と思う質問ばかりが並び、実際の負担は減りません。

1か月だけ、受けた質問を表計算ソフトに1行ずつ記録します。項目は次の4つで十分です。

  • 日付と受けた手段(電話・メール・LINEなど)
  • 質問の内容(顧問先名は書かず、内容だけでよい)
  • 答えた人
  • 答えるのにかかったおおよその時間

1か月たったら、質問を次の2つに分けます。

  • どの顧問先に聞かれても答えが同じ質問: 書類の提出期限、必要な書類の一覧、手続きの流れなど
  • 顧問先ごとに判断が変わる質問: 個別の取引の扱い、個別の労務トラブルなど

減らす対象にするのは前者だけです。後者は専門家としての判断そのものであり、むしろ時間をかけるべき仕事です。前者が全体のどれくらいを占めているかが見えるだけでも、手を付ける順番がはっきりします。

手順2: 答えを「顧問先が読める形」にして、時期の前に届ける

答えが同じ質問は、顧問先が自分で読める形にまとめます。書き方の型は次のとおりです。

  1. 結論: 「〇月〇日までに、次の3つをご用意ください」
  2. 条件: 「昨年から扶養家族が変わった方は、追加で〇〇が必要です」
  3. 例外の入口: 「上に当てはまらない場合や迷う場合は、このメールに返信してください」

最後の「例外の入口」が大切です。すべてを文章で説明しきろうとすると長くなり、結局読まれません。大半の顧問先が読めば済む部分だけを書き、残りは個別に受けると割り切ります。返信文の型の作り方は問い合わせメールの返信が追いつかない|返信テンプレの作り方と使い分けでも解説しています。

まとめた答えは、質問が来る時期の前に届けます。たとえば年末調整なら、案内を例年の質問が増え始める前に全顧問先へ送っておく。手順1の記録を見れば、どの月にどの質問が増えるかは分かります。毎年使い回せるように、送った案内文は年ごとに保存しておきます。

案内文をまとめて置く場所として、顧問先が見られる共有ページを1つ用意するのも有効です。電話で質問を受けたときも「こちらのページの2番に書いてあります」と案内できるようになり、説明そのものが短くなります。

手順3: 質問の受け方をそろえ、生成AIは下書きに使う

案内を先に届けても、質問はゼロにはなりません。残った質問を受けるときの負担も減らします。

まず、質問の窓口を1つにまとめます。担当者の携帯、事務所の代表電話、個人のLINEと入口がばらばらだと、誰が何を答えたかが追えません。質問用の受付フォームやメールアドレスを1つ決め、「いつまでに」「何について」「関係する書類の写真」を書いてもらう欄を用意すると、聞き返しの往復が減ります。

次に、所内の回答をそろえます。手順1で作った記録と手順2の案内文は、そのまま所内のマニュアルになります。担当者が変わっても同じ答え方ができるようにする考え方は、属人化して引き継げない業務をなくす|マニュアルを作り続ける仕組みが参考になります。

生成AI(ChatGPTなど、文章を作るAI)は、案内文や回答の下書きに使うと効果があります。「年末調整の必要書類を、専門用語を使わずに顧問先向けの案内文にして」と頼めば、たたき台はすぐにできます。依頼文の書き方はChatGPTプロンプトの書き方|そのまま使える業務別テンプレート5選を参考にしてください。

ただし、士業事務所で使うときは次の2点を必ず守ります。

  • 顧問先の名前や個人情報、個別の数字を入力しない: 士業には法律で守秘義務が定められています。AIに入力してよい情報の線引きは、事前に所内で決めておきます。決め方は生成AIの社内ルールの作り方|中小企業がまず決めるべき5つのルールで解説しています
  • 最後は必ず資格者が確認する: AIの下書きには、古い制度の説明や誤りが混ざることがあります。制度は毎年のように改正されるため、送る前に内容を確認するのは人の仕事です

まとめ: 今日から手を動かせる最初の1ステップ

顧問先から同じ質問が繰り返し届くのは、答えが顧問先の手元に残っていないからです。負担を減らす順番は次のとおりです。

  1. 1か月分の質問を記録し、「誰に聞かれても答えが同じ質問」を見つける
  2. その答えを結論・条件・例外の入口の型でまとめ、時期の前に届ける
  3. 質問の窓口を1つにし、所内の答え方をそろえる
  4. 生成AIは下書きに使い、個人情報は入れず、最後は資格者が確認する

今日できる最初の1ステップは、この1週間に受けた質問を思い出せる範囲で5つ書き出し、そのうち「どの顧問先にも同じ答えをしたもの」に印を付けることです。印が付いた質問が、最初に案内文にすべき候補です。

事務所の業務に合わせた質問の受付方法や、案内文・所内マニュアルの仕組みづくりについては、無料相談で個別にお答えしています。

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